超一流!

「カンッ!」打球が自分の方へ飛んできた。

夢の中に出てくる場面に似ている。

「んっ!?」足が動かない。

やっぱり夢か?

いや受け入れ難い現実だ。

草野球であればまだまだプレーできると高を括っていた。

重度の運動不足が祟って足が動かないどころか、

打てない、守れない、走れないの三拍子が揃ってしまったことに愕然としている。

 

一年に一度、高校野球の同窓会に参加している。

『城島会』対『別大附属OB』の対戦でウグイス嬢によるアナウンス付きの

本格的な試合を行うわけだが、大爆笑の珍プレー続出は言うまでもなく、

五イニング終了後「体力と年齢を考慮して只今より休憩いたします。」

と、アナウンスが流れると観客たちから失笑が漏れることも恒例となった。

 

『城島会』とは、元メジャーリーガーの城島健司君とその同級生たちのチーム名で

私もそこに加わっている。

別府大学附属高校野球部で三年間、同じ釜の飯を食い、白球を追い、甲子園出場を目標に、

夢を分かち合っていた仲間たちとの楽しいひと時である。

 

城島君は我々の期待を遥かに超える活躍で超一流のプロ野球選手となって引退した。

私は美術商としての道を歩んでいるが、美術商にとっての超一流の仕事とはどういったものだろうか。

日本中を駆け回り、世界を飛び回り、より多くの名品を扱うことなのか。

真贋を見極め、高額品を扱い、多額の利益を稼ぎ出すことなのか。

新しい価値を見出だし、或は地域の文化を継承し、次代へ引き継ぐことなのか。

『買う力』『売る力』『残す力』が美術商の仕事の三拍子であると考えるが、

これを継続し続けたその先に『美術商にとっての超一流の仕事とは?』の答えが見つかると信じている。

 

独立して十五年、まだ立ち止まってゆっくり考えるている暇はない。

果てしなく遠くに聳える城島君の大きな背中を全力疾走で追いかけている。