異界への入口

古いトンネルは真っ暗だった。

遠くの明かりはまるで異界への入口の様であった・・・。

一九七〇年代、日田市にて、一家で採石場の仕事をしていたが、

削岩機などの使用による振動病(職業病)に悩まされて廃業を余儀なくされた。

中でも病状が深刻だった伯父は、大分県湯布院町の病院に入院し手術を受けたのち、

療養を続けながら絵画や骨董の商いにて生計を立てるようになった。

その頃、塗装業に従事していた父であったが、

叔父の誘いを受けて、二人三脚で骨董商の道を歩むこととなった。

一九八〇年代初め頃のことである。

父の店は、大分県天瀬町の国道二一〇号線沿いの古いトンネルの入口の脇にあった。

祖父母の住居を兼ねた二階建ての古家は、古いモノで溢れかえっていた。

店の横のほとんど使われていない古いトンネルは車の通りもなく、

子供の遊び場として打って付けであった。

私はいつしか真っ暗な古いトンネルをくぐり抜けてしまい、

骨董界という異界へ入り込んだようだ。

こちら側も案外、成さねばならないことが山積している。